次回作 / ゲーム紹介 / サポート / 掲示板 / リンク 頒布情報更新履歴
トップページに戻る

(過去ログ/創刊号第二号第三号第四号第五号第六号第七号第八号第九号第十号第十一号 )

さんかく工房開発月報 第十二号
クリスマスは経験値二倍、三倍キャンペーンのミッドガルドにお住まいの皆様、こんにちは。
何のゲームをやっているかばれてしまいそうな発言の(凸)ノです。
寒さが堪える時期にさしかかり、いよいよ冬コミも近づいて参りましたが、コミケ当日は風が強くなったり、雪が降ったりしない事を願う限りです。

伝説のかけらのDL販売を開始。それに合わせて体験版を第一部のラストまでプレイ可能に

お陰様で伝説のかけらは、製品をほぼ消化する事が出来、ロットアップを迎える事が出来ました。購入して下さった皆様、本当にありがとうございます。
そして、各ショップでのパッケージ販売は終わってしまいましたが、現在はダウンロード販売での販売を行っております。
それに際して、伝説のかけらの体験版を、今までは五日目までのプレイが可能でしたが、 第一部のラストまでプレイが出来るように、体験版でのゲーム期間を延長する事にしました。
五日目以降をプレイした事の無い方は、是非、プレイして下みて下さい。

あと、MKさんの星の聖杯もフォズたんシナリオが最初から最後までプレイ出来るという、大変太っ腹な体験版が仕上がったようです。
身内贔屓ではなく、本当に良い作品だと思います。ベタベタな学園恋愛物かと思ったら、初老の老人と銃を突きつけあったり、 洞窟の中でフォズたんとの一夜があったり、特技はベギラゴンだったりと、 萌えと燃えの入り交じる、予想を裏切る展開が楽しめますので、伝説のかけら共々、 星の聖杯も応援してあげて下さい。

星の聖杯

『月と風と薔薇と偽りの王女』開発状況と、背景担当者募集について

ええっと、先月と同じタイトルですな。
進み具合も先月と……(ry
えー、引き続き背景さんを募集しているという事で、我こそはという方のご応募、スタッフ一同、心よりお待ちしております。

伝説のかけら-side story- Decision〜蒼の彼方へ〜


−1−

「人の心がどれだけ移り変わろうとも、ここで感じる風だけは、今も昔も変わらないわね」
ランシール大聖堂の鐘楼。本来ならば高位の祭司にしか立ち入る事の許されないこの場所で、
少女は海から流れてくる潮の香りと風を感じていた。
ランシールで一番高い位置にあるこの場所が、少女にとって今も昔も変わらない、 一番のお気に入りであった。

「リゼット様ぁ〜」
情けない声を上げながら、息を切らせて少年が鐘楼へと駆け上がってくる。
「はぁ、はぁ、はぁ……、またお一人でこのような場所にいらして……。何かあったら危ないじゃないですか」
「相変わらず高所恐怖症なのね、クロードは。
 権力の亡者達が跳梁跋扈している下に比べたら、ここはこんなに風が気持ちいい場所なのに」
「めっ、滅多な事を仰らないで下さい!
 そんな事よりも、もう本礼拝の時間になるんですから、早く準備をしていただかないと……
 クザヴィエ枢機卿猊下を始め、皆様リゼット様をお待ちなんですから」
「枢機卿達が待っているのは、私じゃなくて総大司教でしょ。
 私はまだ正式に総大司教の位を受けていないんだから、私なんか無視してくれればいいのに」
「リゼット様ぁ〜」
今にも泣き出しそうな声で、クロードはリゼットにすがる様な瞳を向けた。
「分かったわよ……でも、後五分。いや……三分でもいい。
 もう少しだけ風に当たらせて」
「分かりました。後、五分だけお待ちします」
「ありがとう……でも、今日は本当に風が気持ちいいの。
 こんなに気持ちのいい風を感じたのは、生まれて初めて……
 ううん、前にも感じた事がある、懐かしい雰囲気。
 今まで失っていた大切な物が、また元に戻ってきたような……、そんな不思議な気持ちにさせられる……」
ランシール次期総大司教となるリゼットは、風を抱くかのように腕を合わせ、 東から流れてくる風を全身で感じていた。

−2−

「へっくしょん!」
ハンモックで気だるそうに横になっていたミレッジが、大きなくしゃみをした。
「どうしたの、ミレッジ。ひょっとして風邪でもひいた?」
「アルスちゃんったら、いや〜ね〜。私が風邪なんか引くわけないじゃない。
 ちょ〜っと、潮風が鼻にムズムズっときただけよ」
「なら、いいんだけど……」
僕達は今、アリアハンの西にある、ランシールという大陸を目指して、航海の途中だ。
僕達はポルトガで船を手に入れてから、バラモスの居城であるネクロゴンド城を目指したが、
バラモスが現れて起こった地殻変動により、ネクロゴンドの城へ海路から進入する事は不可能となっていた。
他に何かネクロゴンド城へ侵入出来る方法は無いかと、世界各地を回って得られた情報は、
伝説の不死鳥ラーミアを蘇らせる事が出来れば、空からネクロゴンド城に突入する事が出来る。
だが不死鳥ラーミアを蘇らせるのは、6つのオーブを集める必要があるという事も知り、
この広い世界から、たった6つのオーブを探すという難問に頭を抱えたくなったが、
それでも不死鳥ラーミアを蘇らせない限り、僕達はバラモスと戦う事すら出来ないのだ。
そんなわけで、僕達は数少ないオーブの情報を頼りに、世界各地を航海する旅を続けている。
「ふわぁ〜 それにしても本当にやる事ないわね〜」
ハンモックで横になったままのミレッジが大きなあくびをする。
「ふ〜ん、やる事が無くて退屈ねぇ……
 ミレッジ、アンタ私がが科したカリキュラムはちゃんとこなしているのかしら?」
眼鏡を掛けて本を読んでいたドロシーが、船室から甲板へと上がってきた。
「うげっ、ドロシーちゃん!
 い、いやぁねぇ……ちゃんとやっているに決まっているじゃないの〜」
「それじゃあ、メラ系の呪文は何があるか、全て言ってみなさい」
「ドロシーちゃん、私をそこまで馬鹿にしてもらっちゃ困るわね。
 メラにメラミにメラゾーマでしょ! こんなの子供でも分かる常識じゃな〜い」
ミレッジはえっへんと得意気に胸を張って言う。
「それじゃあ、その呪文の詠唱を、それぞれ言ってみなさい。」
「え゛っ……」
ミレッジの全身が一度ぴくっと痙攣して、そして固まる。
「毎日呪文の詠唱の書き取りをやらせているんだから、このくらい覚えているはずよね。
 はい、まずは基本中の基本、メラから」
「え〜っと……紅き精霊、我が力の元に炎となりて目覚めよ……かな?」
ミレッジは頼りなさそうに答える。
「うん、正解。まあこれは転職したての頃に、無理矢理覚えさせたから、さすがに忘れていないわよね」
「はっはっは〜、当ったり前じゃないの! あの時の特訓を思い出すだけで寒気がしてくるんだから。」
とか、言いながら、思いっきり自信が無さそうだったように見えたのは僕だけなのか?
「それじゃあ次はメラミで行きましょうか」
「はっはっは、まっかせなさ〜い!」
おっ、今度は自信満々だ。案外、真面目に勉強しているのかな、ミレッジ。
「…………………………………………」
と、思ったのも束の間、次の瞬間にはミレッジは絶句状態になっていた。
「ど、どうしたの、ミレッジ。あんなに自信満々そうだったじゃないか」
「う、うるさいわね! ちょっとど忘れしているだけよ!」
「戦いの最中にど忘れなんてしていても、モンスターは思い出すのを待ってなんてくれないわよ」
「わ、私は実践主義者なのよ! だから普通の時は思い出すのに時間が掛かるの!」
「分かったわ、一分だけ待ってあげる」
「ふっ、一分もあれば思い出してみせるわよ!」
 ………………………………
「10秒……」
「ま、まだまだよ!」
 ………………………………
「20秒……」
「まだまだあと40秒!」
 ………………………………
「5、4、3、2、1……」
「ありません……」
ミレッジはハンモックから降りて、甲板の上に両膝をついて、深々と頭を下げた。
「何、そのありませんってのは……」
「いやぁ、ちょっとこの前シャオちゃんに教えてもらった、
ジパングのボードゲームで負けを認めた時は、そう言わないといけないんだってさ」
「ふーん、シャオとボードゲームねぇ……結局、魔法の勉強はしていなかったってわけね?」
「い、いやあ、全くやってないってわけじゃないのよ」
「ふーん、それじゃあ、これは何かしら?」
ドロシーは手に持っていたノートを広げてミレッジに見せる。
広げられたノートは、全くの白紙状態だ。
「ええっと、これはその〜。あの〜。そうそう、ノートいっぱいに書き込みをしちゃったから、
 砂で全部消しちゃったのよ〜 あはははは〜!」
「砂で消した割には、紙に跡が全く残っていないんですけど? ミレッジさん。」
「え〜っ、そう? おっかしいわね〜。あはははは〜」
「ミレッジ、アンタこれから全部の呪文の詠唱を覚えるまで、私が付きっきりで見ているわ。」
「そ、そんな〜。私にもプライバシーってもんがあるのよ!」
「そんな物は、当たり前の事が出来る人間が初めて主張出来る事よ!」
「いや〜よ〜! 私は遊び人なんだから、遊んでいて何がいけないのさ!」
「アンタは自分が望んで賢者に転職したんでしょうが! ほら、いい加減諦めなさい!」
「いや、いや、いやぁ〜! た〜すけて〜。」
ドロシーはミレッジを船室まで引きずって行こうとするが、
ミレッジは柱にしがみついて離れようとしない。
「みんな〜、ランシールの町が見えたよ〜!」
帆のてっぺんに上って、辺りを警戒していたシャオが叫ぶ。
「いやっほーい! 町よ〜、町だわ〜!」
ミレッジはドロシーを振りほどいて、船首へと走る。
「こ、こらっ! まだ話は終わっていないのよっ!」
「まあまあ、堅い事言わないでさ、ドロシーちゃん。お説教はまた町に着いてから聞くからさぁ」
「全く、仕方ないわね……。それにしても町が見えただけであのはしゃぎ様……
 あれでも本当にうちの最年長者なのかしら……」
「でも、僕はミレッジが賢者になっても、ミレッジらしいままでいてくれるから、
 少しほっとしているよ」
「そうやって、アンタが甘くするから付け上がるのよ!」
な、何で僕が怒られないといけないんだろう……
「まあ、ミレッジの魔法技術に関しては、気長に行こうよ。今まで魔法とかには無縁だったんだからさ」
「そうも言ってられないのよ……」
ドロシーは顎に手を当てて、深刻そうな表情になる。
「どうして?」
「あのランシールの町っていうのは、全世界にある教会の総本山でもある大神殿があるのよ。
 そして、賢者の資質を持っている人間だけが、総大司教になれるという仕来りがあるのよね。」
「それが、何かミレッジと関係あるの?」
「これは私の勘なんだけど、ミレッジはひょっとすると……
 ううん、それはまあ置いておくとして、総大司教になれる資格がある賢者という職業は、
 あの町では誰からも尊敬される職業なのよ。
 だから、ミレッジが賢者らしく振舞ってくれると、情報収集も随分とやりやすくなると思うんだけど……」
「あっはっはー! 今日は意識が無くなるまで飲み明かすわよ〜!
 I'm the king ot the world!」
ミレッジは船首に両手を広げて立ち、ランシールの町に向かって叫んでいた。
「…………とてもじゃないけど、賢者様には見えなさそうだね……」
「頭痛くなってくるわ……」

ひとしきり叫んで満足したミレッジは、静かにランシールの町を見つめていた。
「お姉ちゃん、随分と嬉しそうだね」
帆から降りて来たシャオが、ミレッジの後ろに立つ。
「うん、何か懐かしくてね〜」
「えっ、お姉ちゃん、ランシールの町に行った事があるの?」
「や〜ねぇ、シャオちゃん。初めてに決まってるじゃない。」
「でも今、懐かしいって言っていたよ……」
「あれ、そんな事言ったっけ? あ〜、きっと陸が恋しかったって意味で無意識に言ったのよ。多分」
「なるほどね。確かに久しぶりだもんね、陸に上がるのは」
何気ない言葉のやり取りだったが、シャオは後日、この会話を改めて省みる事になる。


さんかく工房
トップページに戻る